よかれと思って後輩にアドバイスしているのに「それって説教ですか?」とまるで“意地悪”をしたように受け取られたら……職場を潤滑に進めたい管理職としては、困ってしまうだろう。
自分の想像を超える行動パターンを示す部下に出くわした時、どう指導したらよいのか。とりわけ受け取り方の歪んだ相手に効果的な指導をする方法は、なかなか答えのでない難しい問題である。
ここでは、そんな悩める管理職たちの相談に心理学博士・榎本博明が答えた『「指示通り」ができない人たち』(日経BP)より、「アドバイスを意地悪としか受け止めない」とある部下の事例を抜粋して紹介する。(全4回の4回目/最初から読む)
◆◆◆
「意地悪されている」と新人から相談が
職場のトラブルの中には、メタ認知の欠如によるものが非常に多いように思われる。人の言動について、「言い方が酷い。もっと他に言い方があるだろうに」とか「あの態度に傷ついた」など、あれこれ評するのに、自分自身の言動にはほとんど意識が向いていない人が結構いるのだ。そこで、さまざまなトラブルが生じることになる。
その種のトラブルに振り回されている管理職は、現在進行中の問題について、つぎのように語る。
「新人から『先輩たちから意地悪ばかりされていて、このままじゃどうにも身がもちません』と相談があったんです。でも、これまでこの職場で意地悪をされたといった話は出たことがないし、職場の雰囲気はとても良いと感じていたので、いったいどういうことなのか探るために、新人の日頃の様子やふだんのやり取りについて周囲の先輩たちに聞いてみたんです」
『それは良い対応ですね。一方的な言い分だけでは実態はわからないですからね』
物覚えが悪く、足手まといな存在に…
「ええ、そう思いまして。で、周囲の人たちに聞いたところ、その新人が言うのとは真逆のことを言うんです」
『真逆というと、どんな感じなんですか?』
「その新人が、これまでの新人と違って、物覚えが非常に悪くて、いくら教えても間違いばかりするので、ほんとうに困ってる、って言うんです。いわば、足手まとい的な存在になってるようなんです。それでも何とか戦力にしないといけないし、同じことを繰り返し教えなければならず、根気強くアドバイスしているものの、正直言って、ほんとうに手がかかり困ってる、これじゃこっちの身がもたない、って言うんです」
『なるほど。一方は意地悪ばかりされていて身がもたないと言い、他方は同じことを何度も教えるなど根気強くアドバイスしなければならず、これでは身がもたないと言うわけですね』
「それって説教ですか?」アドバイスに過敏に反応
「はい。当初はどちらを信じたらよいのかわからなかったんですが、具体的にどんなやり取りがあったのかを聞いてみると、新人の言う意地悪がけっして意地悪とは思えないんです。先輩たちが親切でアドバイスをしているのに、新人はそれを意地悪と受け止めているようなんです」
『その新人さんの受け止め方に、どうも問題がありそう、っていうことですか』
「具体的なやり取りを知ってみると、そう思わざるを得ないんです。そうした受け止め方に関連することなんですけど、もうひとつわかったことがあるんです」
『受け止め方の歪みに関連して、何かわかったことがある』
「はい、そうです。先輩たちが言うには、新人が間違ったやり方をしたり、効率の悪いことをしていたりするため、そこを指摘してアドバイスすると、『それって説教ですか?』と言ったり、『そういう上から目線な言い方はやめてもらえますか』と言ったりするらしいんです。すぐに傷ついただとかハラスメントだとか言われる時代なので、傷つけないように言い方には気をつけているし、けっして偉そうな言い方や乱暴な言い方はしていないのに、すぐにそんな反応になるから困っている、って言うんです」
『そうですか。経験豊かな熟練者が、まだ経験の浅い未熟な人に仕事のやり方を教える際には、言い方は別にしても、構図としては上から目線にならざるを得ないでしょうね。それに対して、その新人さんは、必要以上に過敏に反応している可能性があるというわけですね』
「はい、そうです。そうとしか思えません」
指摘を“意地悪”と受け止めてしまう
『そのようなアドバイスの受け止め方について、新人さんにも何かお尋ねになりましたか?』
「ええ、率直に尋ねてみました。そうしたら、やっぱり受け止め方がかなり歪んでいるのがわかったんです」
『どんなふうに歪んでいるんですか?』
「その新人が言うには、先輩たちは自分のやり方をいちいち否定してくる、すぐにダメ出しをしてケチをつける、ほんとうに針のむしろで、こんなんじゃ仕事に集中できない、って言うんです。結局、自分のやり方が間違っているのを指摘されるのを意地悪って受け止めちゃうんですよね」
『やり方が違うという指摘も、こうすればいいというアドバイスも、ある意味では、その人が今しているやり方を否定することでもありますからね』
どうしたら正しい受け取り方を身につけられるのか
「でも、そうしないとちゃんと仕事ができるようにならないじゃないですか。それを否定されたと受け止めていたら進歩がないじゃないですか」
『その通りです。たしかにその方の受け止め方には歪みがありそうですね。やり方が間違っていたら率直に指摘してもらわないと、正しいやり方を身につけることができないですからね』
「そうですよ。それを、自分のやり方をいちいち否定してくる、意地悪だ、針のむしろだ、なんて言ってたら、できるようにならないじゃないですか」
『そうですね。自分のやり方をいちいち否定してくるというのは、そのやり方が間違ってるからで、けっして意地悪ではないですね。傷つけたらややこしいし、言いにくいからと、間違ったやり方をしていても指摘せずに放置する方が、かえって意地悪かもしれませんね』
「ほんとにそう思います。周囲の先輩たちは、よく投げ出さずに指導してくれていると思いますよ」
『先輩たちがまずい点を指摘して、正しいやり方をアドバイスしてあげないと、その人は上達していきませんからね。それを新人さんにどうやってわかってもらうかが難しそうですね』
「そうなんですよ。だから困っちゃったんです。両者の言い分を聞いて、実態は何となくわかったんです。でも、その新人の受け止め方の歪みをどうしたらいいのか」
『あなたの見方は歪んでるよ、って言って納得するくらいなら、先輩の指摘も素直に受け入れてるでしょうし、それを意地悪と受け止めるくらいなので、見方の歪みを指摘しても、意地悪と思われてしまう可能性もありますね』
「だから、どうしたらいいのか、悩んでしまいます」
心理学博士がアドバイスする対処法
そこで、この新人の受け止め方の歪みのおおもとになっているメタ認知の欠如と、その対処法について、以下のように説明した。
このケースにみられるメタ認知の欠如は、メタ認知的モニタリングの欠如である。先輩たちにやり方が違うと注意されたり、望ましいやり方をアドバイスされたりしたとき、「自分のやり方を否定された」という点にばかり目を向けているが、「自分のやり方が間違っていた」という点に目を向けていない。やり方が間違っていなければ、注意されることもアドバイスされることもなかったはずだ。そこに気づいてもらう必要がある。
その際、以下の3つの点についてしっかりと認識してもらうような対話をするのがよいだろう。
学ぶ姿勢が欠如していると、自分が損をする
第1に大切なのは、仕事のやり方と自分自身を切り離すことである。仕事のやり方が間違っていると指摘された場合、「仕事のやり方」は否定されても、「自分という人間」が否定されたわけではない。そのことを説明し、「仕事のやり方」と「自分という人間」を冷静に切り離して受け止めるように導く対話をする必要がある。
第2に大切なのは、指摘したりアドバイスしたりするのは意地悪でなく親切であり、指摘せずアドバイスしない方が意地悪だということを説明し、納得してもらうことである。指摘やアドバイスがあれば間違ったやり方が改善され、正しいやり方で仕事ができるようになっていくが、指摘やアドバイスをしてもらえないと、いつまでも間違ったやり方を続けることになり、仕事ができるようにならず、お荷物社員になってしまう。そのことを理解してもらうような対話をする必要がある。
第3に大切なのは、この事例のような受け止め方の歪みがみられるような場合、上から目線に過敏に反応するところにも問題があることに気づいてもらうことである。自分より仕事に慣れている人から注意されたりアドバイスされたりすると、「どうだ! こっちのほうがよく知ってるんだぞ!」と誇示された、あるいは「こんなことも知らないのか!」とバカにされた、いわばマウントしてきたと感じてしまう。
それは、熟練者から学ぼうという姿勢が欠如しているということでもあり、それでは自分が損をする。そのことに気づき、熟練者から貪欲に学ぼうという気持ちになれれば、注意もアドバイスも自分の糧として利用し、仕事力を高めていくことができるはずである。そのことを理解してもらうような対話をする必要がある。
(榎本 博明/Webオリジナル(外部転載))
<このニュースへのネットの反応>
普通に発達障害なんじゃないの?
自分が間違ってることを理解出来ない人はいるけどそういう人は面接で判断しようや
一見爽やかなスポーツマンタイプで受け答えもしっかりしているのに、実際に仕事してみたらこういうタイプだったってのは割とある。多分𠮟られ慣れてなんだろうなって思って放置してたら長期の病休に入ったなんてこともあった。
説教も感想も要らん、指摘と事実が必要なんだ。説教と指導は別だぞ、区別が出来ん奴は発達障害。
おぉ、怖い怖い、その内本当に斬首か腹切り命じられそう!
何でもハラスメントにして逃げる事しか考えてないから物事に対する耐久性も対応力もゼロ。それがZ世代
思いあがった新人は最初の1週間で分からせてやらんと駄目だろ。
全くそういう部下がいて困ってて、心理学学んだ友人にちょっと愚痴ったら、一瞬でそれ普通に発達障害で医療の範疇だから無理だよって言われた。肩の荷がおりた。本人もどうにもできずつれぇらしい。うつ病とかもそうだけど対話がどうとかじゃなくて医療知識が必要だと思う
新人叩きしつこいのう あんたたちのスポンサーはそんなに若者が嫌いなのか?
本人はアドバイスのつもりでも周りが言いすぎたりすると混乱するんだけどね
もういいって、最低限教えたらほっとけって言いたいけど、こういうのって丁寧に教えないと何もしないんだよね。一度教えてもメモもしなけりゃ次の日あたりには半分以上教えたことを忘れてる。優しくっていうか事務的に指摘や注意をしても恥をかかされたとか訳わかんないこと言われた時はもう関わるのが嫌になった。
先輩でも後輩でも、良い人良くない人がいる。生意気後輩・言ってることがおかしい先輩とは、距離置いとけ。
老害にも「私は今までこれでやって来た!なんで変える必要があるんだ!」「私のやり方が間違ってるって言いたいのか!私の立場を悪くする気か!」「そんな理屈こね回されてもわからん!このやり方で何が悪いんだ!」って感情が先走って論理的に考えられず非効率なやり方に固執するバカはいる。こういう連中は自分の価値観とその上に立つ自分を守ることに必*んだよ。
説教で何が悪いと思うが出来ないのも理解できてないならやめてしまえまで思うがねなぜ、できない人間を擁護するのか理解できない個人的には見捨てて、単純作業に送り込んでしまえと思うがね
そうだ、説教だ。その時だけでも良いから黙って聞け。 受けたくもない赤点ギリギリくらいの必須授業だ。その時だけでも良いから真面目なフリをしろ。 満点なんて取らなくても良いから、70~80くらいを目指せ。
単純作業すら出来ないぞ。物事の順序や決まりを覚えられないのだから、勤め人ではなく個人経営で自分の働き方・作業方法がどう売り上げに関わってくるか自分の資産に直接作用する方が理解できるかと……二度と社会復帰出来ないかもしれないが
まずデータをデジタルでも紙でもいいから出す(かかった時間、ミスの回数、事故率、作業終了までにかかわった人数等)で、そいつの能率が周囲と比べてどの程度のものかをはっきり見せる。そんで仕事を覚えるってのは「素人は上手くいかなくて当然をベテランは基本的にミスしないに『変えていくことだ』」と教える。それでも「いじめだ」と言うならもう無理。人事権持ってる人に相談。
説教は意地悪ではない。教え導くために言い聞かせることであるため、指導者である上司が部下に説教することは別に間違ってない
もし新人がもう一人いて同じ指示して結果に差があれば自分のやり方に問題あると気付けるはず、と思うがこれで気づかなかったら本気でどうしたらいいんだろうか…
そんな人を、採用した面接官に文句を言うしかないな