後編では、大御所芸人に「裸を見せて」と言われて断った理由や、消防士を辞めてお笑い芸人になった経緯などを聞いています。
◆性格はガリガリだったころから変わらず
――筋肉芸人は、服を脱いで筋肉を見せるイメージがありますが、青木マッチョさんは嫌なのですか?
青木マッチョ:普通の感覚として、裸を見られるのって恥ずかしいじゃないですか。芸人1年目に、お正月の(明石家)さんまさんの番組に出させていただいたとき、「脱いで筋肉見せてや」と言われたのですが、「すいません、恥ずかしいから無理です」と断ってすごい空気にしてしまいました。全然ウケなくて、全カットになりました。でも本当に嫌だったんです。
――自分でも、鍛えた体を鏡で見たりしないんですか?
青木マッチョ:自分でも見たくないですね。ジムでも、極力鏡を見ないようにしてます。筋トレをするとテストステロン(男性ホルモンの一種)が分泌されて、自信がついたり性格が明るくなったりすると言われてるし、筋肉芸人って声がどんどん大きくなるんです。
でも僕は16年前から何も変わってなくて、ガリガリの頃の性格のまま体だけマッチョになった感じです。消防士を辞めたのも、「体がデカいのに、声が小さくて元気がない」とめちゃくちゃ怒られて、心を病みそうになったというのがあります。
◆役立たずマッチョだった消防士時代
――消防士時代は、マッチョを生かして活躍していたのでは?
青木マッチョ:消防の現場では狭い場所に入らなければいけないこともあるので、「体がデカすぎて邪魔だ」と言われていました。担架で傷病人を運ぶときは役に立ちますが、それもある程度の力があればいいので「そんなに筋力使わねえよ」と言われましたね。
1つだけ褒められたのは、消防レスキューの技術を競う大会で、7m下にいる人をロープで引き上げる「引き上げ救助訓練」のスピードだけはダントツで早かったことです。でも5人ひと組で、役割ごとに安全の確保など細かい採点基準があるので、タイムが速いだけでは勝ち進めませんでした。消防士時代の最後のほうは救急隊員をしていたのですが、救急車の後方にいるとデカくて邪魔だから、運転手をやっていました。
◆嘘をついて上京してNSCに
青木マッチョ:小学生の頃からお笑いが好きで、「お笑い芸人になりたい」という気持ちはあったんです。でも性格が暗すぎて、「学校でも目立たない奴がお笑い芸人になれるわけがない」と思って諦めていました。それで消防士になったんですけど、全然向いていなくて「『体がデカいくせに声が小さい』と怒られるなら、もう痩せようかな」と思うくらい追い込まれていました。
そんなタイミングで、兄弟の上2人が結婚して、子供を2人ずつ作ってマイホームや車を買うという、人生のゴールを決めたんです(笑)。僕が消防士になったのは、公務員になって親にいいところを見せたいという気持ちが正直ありました。でも、すでに兄弟が親を安心させてくれたので、「今なら、好きなことをやってみてもいいんじゃないか」と思って消防士を辞めました。
消防士時代はダメだと言われた「マッチョなのに暗い」ところも、お笑いだったらウケるんじゃないかなと思ったのもあります。親には「お笑い芸人になる」とは言わず、「東京でパーソナルトレーナーをやりたい」と嘘をついて上京してNSCに入りました。
◆ノブコブ吉村さんとのハワイ旅行で「恐怖体験」
――お笑い芸人になってみて、どうですか?
青木マッチョ:芸人の先輩方は話しやすくて、例えば野田クリスタルさんは大先輩ですけど、自分とテンションが近いなと感じます。クリスタルジムでパーソナルトレーナーをやらせてもらっていますし、1番お世話になっています。あとお世話になっているのは吉村さん(崇、平成ノブシコブシ)。YouTubeのゲーム配信に出していただいたのがきっかけで飲みに連れて行ってもらったり、吉村さんの奢りでハワイ旅行に連れて行ってもらったこともあります。
――ハワイ旅行で印象に残ったことはありますか?
青木マッチョ:藤森慎吾さんもいらっしゃって、芸人数人で行ったんですけど、初日の朝に吉村さんの個室のトイレに大便がしてあったんです。「誰がやったんだ」と「人狼」みたいな犯人探しになりました。でも結局誰がやったか分からず、次の日の朝も吉村さんの部屋のトイレに大便がしてあって、さらに同じことが6日間続いたんです。暗号が置いてあったりもしました。「誰にも気づかれずに、先輩の部屋で毎朝大便をする奴がいる」と、段々と気味が悪くなってきました。
◆何か爪痕を残したかったんです
青木マッチョ:……自分です。
――少し怖かったのですが、そんなキャラなのですか?
青木マッチョ:静かにはっちゃけるタイプです(笑)。そのときのメンバーでは僕が1番後輩だったので、何か爪痕を残したかったんです。初日に大便をしたのは恐らく藤森さんだったと思うんです。それで犯人探しがすごく盛り上がったので、「ノーマークの奴が犯人だったら面白いかな」と乗っかろうと思いました。喜んではいただけましたが、申し訳ないことにハワイ旅行の1番の思い出がそれになってしまいました。
――芸人としては、どんなタイプを目指しているのですか?
青木マッチョ:南海キャンディーズのしずちゃんさんや、オードリーの春日(俊彰)さんみたいになりたいなと昔から思っていました。そのためには一緒に組むなら、ネタが書けるブレーン的な人がいいと思って、NSC時代に同期の鈴木ロン毛に声をかけました。鈴木は当時から山里亮太さんに憧れていて「相方を立てられる人になりたい」と言っていたんです。鈴木は、赤木ぼうずとコンビを組むことが決まっていたのですが、そこに入れてもらってトリオ(かけおち)を結成することになりました。
――将来、出たいテレビ番組はありますか?
青木マッチョ:かまいたちの濱家さんの『Venue101(ベニュー ワン・オー・ワン)』(NHK+)のような、音楽をやっている色々な人達に話を聞く番組に出てみたいです。あと自分は我慢強いタイプなので、春日さんのような体を張る系の企画に出たいと思っています。
青木マッチョ:『M-1グランプリ』は、まだ決勝にトリオが進出したことがないので、決勝に行きたいと思っています。もっと近い目標としては、『UNDER5 AWARD(アンダーファイブ アワード)』という芸歴5年目以下の若手芸人が対象の大会で準決勝まで進んでいるので、次も勝ち進んで決勝まで行きたいです。
ネタとしては、筋肉があるけど暗いという特徴を生かしたいですが、やはり3人全員が生きないとトリオとしては上に行けないと思うので、ツッコミの鈴木ロン毛と、ボケの赤木ぼうずと僕がうまく回っていくような漫才をしたいと思っています。
<取材・文/都田ミツコ 撮影/星亘>
【青木マッチョ】
1995年愛知県名古屋市出身。吉本興業、NSC東京27期。NSC在学中にお笑いトリオ「かけおち」を結成。元消防官。クリスタルジムパーソナルトレーナーとしても活動。各種SNSも更新中
インスタグラム:@aoki_no_macho
X(ツイッター):@aoki_Nomacho
YouTube:「青木マッチョ【かけおち】」
【都田ミツコ】
ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。