アクセンチュア(Accenture)は、世界的なプロフェッショナルサービス企業であり、戦略、コンサルティング、デジタル、技術、運用の分野で幅広いサービスを提供しています。以下に詳細をまとめます。
概要
- 設立: アクセンチュアは1989年に設立されましたが、そのルーツは1953年のアーサー・アンダーセンのビジネスコンサルティング部門に遡ります。2001年にアクセンチュアとして再ブランド化されました。
- 本社: アイルランドのダブリンに本社を構えています。
- 従業員数: 世界中で約70万人の従業員を抱えています。
事業内容
アクセンチュアは以下のような多岐にわたるサービスを提供しています:
- 戦略およびコンサルティング: クライアント企業の戦略立案や業務改善、経営改革を支援します。
- インタラクティブ: デジタルマーケティング、デザイン、顧客体験の向上を目指したサービスを提供します。
- 技術: ITインフラの構築、システム開発、クラウドサービスの導入支援などを行います。
- 運用: 業務プロセスの効率化やアウトソーシングサービスを提供し、クライアントの運営をサポートします。
業界別サービス
アクセンチュアは以下の業界に特化したサービスを提供しています:
- 金融サービス
- 通信、メディア、テクノロジー
- 健康・公共サービス
- 消費財および製造業
- エネルギーおよび資源
企業文化と社会貢献
アクセンチュアは多様性と包括性を重視し、従業員の多様なバックグラウンドと意見を尊重する文化を育んでいます。また、サステナビリティと社会的責任を重視し、環境負荷の低減や社会貢献活動に積極的に取り組んでいます。
最近の取り組みと動向
近年、アクセンチュアはデジタルトランスフォーメーションやクラウドサービスの分野でのリーダーシップを強化しています。また、人工知能(AI)やブロックチェーンなどの最先端技術を活用したサービス提供にも注力しています。
関連情報
- 公式ウェブサイト: アクセンチュア
- ニュースとプレスリリース: 最新の企業動向やプレスリリースは、公式サイトや業界ニュースサイトで確認できます。
アクセンチュアは5月27日、2024年1月に発表した今後数年間で企業が押さえるべきテクノロジートレンドの最新調査レポート「Technology Vision 2024」に関する記者会見を日本で開催。同レポートの要点についての説明などを行った。
今回のテーマは「Human by Design」であり、テクノロジー コンサルティング本部 インテリジェント ソフトウェアエンジニアリングサービスグループ 共同日本統括 兼 クラウドインフラストラクチャーエンジニアリング日本統括 マネジング・ディレクターの山根圭輔氏は「日本語に訳した際に最終的に“人間性を組み込む”とする表現を選んだが、“新たにデザインされた人間性”とも読みとることができ、実はこの2つの意味合いが含まれた言葉である」と説明する。
人間性を獲得したAI
これまで同社のテクノロジートレンドの将来予測の中心は基本的には「ヒト」であった。例えばTechnology Vision 2019においては、「Human+ Worker」というトレンドを打ち出し、将来的に人間の活動が機械やシステムとデジタルでシームレスに融合していくこととなり、企業はそうした方向に投資を進める必要性が強調されていた。それから5年を経た現在、ChatGPTを中心とした生成AIの急速な進化が進み、AIが人間の表現能力に近づき、モノによっては追い越すといった状況となり、2019年当時、まったく想像していなかった時代が到来した。
この結果、これまでは主役が人間であり、人間がテクノロジーをどう使いこなしていくか、という視点からの考えであったが、2024年現在では、生成AIやLLM(大規模言語モデル)の進化に伴い、AIエージェントがテクノロジーによって人間性を獲得し、人間のバディとして活動できる未来が見えてきた。山根氏も「人間+AIバディという世界がくるのではないかと思っている」と、AIが人間を支える存在へと進化していく未来が来るとの予測を示す。また、人間と、その人間に寄り添うAIバディという新たな関係性の登場は、AIに人間性を組み込む一方、人間をこれまでの五感の領域から解き放つ方向にも発展していく可能性を示すこととなる。
山根氏は、「テクノロジーによるAIと人間の“共進化”」とそれを表現する。例えば、人間の意思を汲んでくれるAIが常に傍らに居てくれるようになると、これまでは検索ワードでWeb上の情報を収集していた行為(ライブラリアンモデル)から、AIとの対話によって人間が必要としている情報をAIがWeb上に限らずに検索を進め、その結果を説明してくれる「アドバイザーモデル」へと変化していくことが想定される。もちろん、個人別のAIエージェントが存在するからには企業のAIエージェントも存在することとなる。すでに日本でも企業が社内外に向けてAIエージェントを活用したサービスの提供を開始する動きも出てきた。そうしたAIエージェントの質を高めるためには、ChatGPTのような一般的な生成AIだけではなく、企業内に蓄えてきたさまざまなデータとAIを融合させて各企業独自のLLMを構築・拡張していくことで、ユーザーの満足度を高めていくことが求められる。こうした取り組みを進めていくと、これまで検索結果を通してしかユーザーにアプローチできなかったサービスが、AIエージェントを介してダイレクトにユーザーに届けられるようになる時代が到来することになる。
また、山根氏は、そうした企業のAIエージェント活用を進めるにあたって、「ハルシネーション」「倫理違反(不適切表現)」「入力情報の漏洩」「著作権侵害」の4点を配慮すべき必要のあるポイントとして挙げている。
自分専用AIエージェントの時代が到来
現在はAIがユーザーを支援するAIアドバイザーの時代だが、その先に、ユーザー専用のAIエージェントが登場する未来が待っていると言える。AIエージェントの存在は、ユーザーとの対話などの行動を伴う形で物理世界に影響を及ぼすものへとなっていくことが予想される。先般、OpenAIが発表したChatGPT-4oのユーザーとのインタラクションの高さは、まさにその扉を開いたといえるもので、これによりこれまでAIを人間の代わりとして活用することで作業時間の短縮などを図るといったフェーズから、ユーザーが記憶している限定された情報という枠の外からもAIが情報を提示することが可能となり、ヒトの能力の強化・拡張が進み、やがてそれはヒトとAIとの相互学習という方向性に進むことが期待される。
すでにそうしたAIをアイデアのブラッシュアップに活用するという動きは昨年のTechnology Vision 2023においても、日本と米国でのChatGPTの活用方法の違いとして、米国側に多く見受けられる流れとして提示されていたが、2024年に入っても、その日米の違いに大きな差はないことが同社の調査でも浮き彫りになっている。「人間の仕事の代替をAIにやらせようと思うと、いくらAIが進化して行っても、100点を取らせるのは難しい。だからこそ考え方の転換で、人間ができる仕事の幅を超えた生成AIがサポート可能な仕事の幅で何をやらせるのかを考える必要がある」(山根氏)と、知らない言語のリアルタイムの逐次通訳であったり、プログラムの読解とその後のアドバイスなどといったAIを活用することでこれまで人間では行うのが難しかった可能性をブーストさせることができるようになるとする。
また、AIエージェントも、それぞれの用途ごとに得意とする分野が異なることもあるため、複数のAIエージェントを束ねて、それらのAIエージェントを指揮・統率するAIエージェントの存在が重要になってくるとも同氏は指摘する。すでに先行研究として、複数AIエージェント同士が連携しながら、高度なタスクをこなせるフレームワークがオープンソースで研究されたり、AIが学んだことを、ほかのAIに教えるといった研究も進んでおり、さらなるAIによる拡張が今後進むことが期待されるという。
人間の認知能力をデジタルで拡張
そうした生成AIの進化の一方で、デジタル技術の技術革新による人間側の進化も期待できるようになってきた。生成AIによる空間生成はリアルタイム性を持つようになってきており、その精度も現実世界を模写するほどのものになってきたといえる。また、それを人が認識するためのVR/ARデバイスの高性能化も進んでおり、それはこれまでのコンピュータをいつでも・どこでも利用可能にするパーソナルコンピュータからモバイルコンピュータへの進化のその先の空間そのものに展開する「空間コンピュータ」へと人類をいざなうこととなる。空間コンピューティングは、VRとARを包含した人間が作用することができる空間の拡張と定義されており、これによりパーソナルな空間を自由に持ち運べるようになる。
すでに日本を含め多くの研究者が視覚以外の五感、主に触感を仮想空間上で再現する研究を進めており、SFの世界のように自分自身そのものを仮想空間に投影することも将来的には可能になるかもしれない。
ただし、空間コンピューティングの利用は、VR/ARディスプレイを介して行われることに変わりはなく、現実世界から切り離されることとなる。そのため、現実世界側は、ヒトが安心して没入できる環境をどのように担保していくのか、ということを考慮する必要があるほか、事故や知覚/精神疲労などを防ぐUXの検討や、仮想現実内での映像を通じた現実世界の肉体や精神に対するストレスなども考慮する必要があり、サービスプロバイダは没入と快適性の担保に加え、物理空間もあわせた統合的な体験設計が求められるようになるとする。
加えて、AIエージェント、空間コンピューティングのさらに先にはブレインマシンインタフェースの未来が待っているともする。すでに例えばAppleは、Apple Vision Proのプロトタイプ開発メンバーのコメントとして、画面を操作するユーザーの視線の観察結果から、クリック以前に動作の結果を期待して表情が変化しており、目の動きを測定することで、実際に操作する前にユーザーが次に何をしようとしているのかを予測することが可能となることを指摘。より直感的な操作感の提供に向け、ヘッドバンドで脳活動の信号を取得し、Vision Proにアクションを実行される特許も取得している。
こうなるとテクノロジーが人間が何らかのアクションを行う前に、その欲するところを理解し、それに沿った価値を提供することも可能になる未来がでてくる。ヒトが意識しないでそういったアクションが起こせるようになれば、それは肉体の一部として常時活用される新たな手足とも言える存在へと変化していくこととなる。
今後の技術革新に伴い、そうした未来が加速度的に近づいてくる。山根氏は「AIと人間の共進化はジャズセッションのようなもの」だと表現する。AIエージェント同士の相互交流といったこともでてくる。個人にも企業にもAIエージェントが居り、それらがコミュニケーションするという生成AIネイティブ世代もでてくることが考えられる。
共進化によりAIエージェントがユーザーを理解すればするほど、ユーザーはAIエージェントへの依存が高まっていく。就職の際にも人間とAIエージェントが一緒に雇用されるようになれば、AIエージェントも企業内情報に触れることとなるになるが、退職時にこれまで育ててきたAIエージェントを社外秘を知っているからという理由でユーザーから切り離すことになれば、そうした職場の情報は世間に知れれば、AIエージェントを活用する人ほど、そうした職場に転職しようと思わなくなる。そのため、アクセンチュアとしては「BYOAI」の考え方で、AIエージェントによる社内の情報の取り扱いを整備し、退職時に適切な情報の切り離しができるようにするルール整備が重要になってくるとする。
生成AIの急速な進化に伴い、人間よりも優秀なAIエージェントが誕生する未来は間近に迫っていると言える。そうなれば、ヒトが何らかの意思決定をしたと思っても、実際はAIエージェントの意思に沿った決定となる、いわゆるディストピアが到来する可能性がある。こうした懸念に関する山根氏の問いかけに対し、山根氏の約2分ほどの動画から生成AIで作成されたAIエージェント「山根バディ」は、「私はそうは思いません。なぜなら、AIエージェントを育て上げていくためには、自らもAIコーチから学ぶとともに、自らの考えや気づきを常にまとめてAIエージェントに問いかけるといった真に創造的なアクションが必要となるからです」と回答したほか、AIエージェントと共進化できる人をいかに増やすか、そのためには何をしていく必要があるのか、こうしたことを取り組んでいくことが今後の企業や学校における人材育成の大きなテーマとなると指摘。そうして育成された次世代の人材が新たな世界を作り上げ、いつの間にか当たり前のこととして組み込まれていくだろうとしている。
PC業界ではクラウドのAIにデータを送るのではなく、ローカルでAI処理を行うAI PCやCopilot+ PCといった新機軸が打ち出されるようになってきたほか、産業界のさまざまな分野でも、現場でAI処理を行うエッジAIが徐々に普及の兆しを見せている。人間という存在をエッジのものと考えれば、その場で答えを導き出してくれるであろうAIエージェントという存在も今後、活用されていくであろうことは想像に難くない。そうした時代、AIエージェントという新たなプラットフォームを活用する企業・個人と、そうでない企業・個人とで分断が生じる可能性もある。そうした意味ではAIエージェントの活用と併せて、倫理やルールの整備など、今後の普及で生じるであろう課題の解決に向けた取り組みも並行して進めていく必要があるだろう。
(小林行雄)